こちらに来てからあまり財布から金が減らない。考えてみると、朝食は宿代に含まれているし、歩いて図書館に行って昼になるまで本を読んでいる。昼食はい
つもサラダと珈琲で終わりで、閉館時間を過ぎて見に行くのはいずれも無料の博物館や美術館、というわけで別に節約をこころがけているわけでもないのだが、
金を使う機会があまりない。
結局いちばん高くつくのはコピー代で、一枚30-40円というところ。まあ、古本屋でもとうてい見つかりそうにないものばか
りなのでしかたがないし、質のよい絵葉書一枚の値段で30ページはコピーできる。(と、換算してみると、つくづく絵葉書は高い)。
今日も開館から閉館まで図書館。土曜の夜遅くまで開いている場所、というわけでテイト・モダンに行き、展示をゆっくりと見る。
ビル・ヴィオラの五面スクリーンの部屋は、思い切って広い空間を占めていてよかった。とくに激しい水音がして、しかしそれがどのスクリーンのできごとなのかわからない瞬間。
ヨーゼフ・ボイスの部屋も、展示数は多くないものの、"Lightning"を中心に、教室を思わせる黒板が配列されていて工夫があったし、キーファー
の部屋のメインが、サンパウロを俯瞰する"Lilith" 1987-9
というところも、この作家のパースペクティブ志向を表わしていておもしろかった。
とくによかったのは、テムズ川のどぶさらい企画を展示したMark
Dionの作品。キャビネットの引き出しや戸棚に、川掃除ででてきたものをずらりと並べてあるのだが、その並べ方が、なかなか楽しい。たとえば、いくつも
のボタンが並べてあるその並びに、サイコロがちょこんと置かれていて、さらにその横には人間の歯が一本置いてある。ボタンは二つ穴と四つ穴で、サイコロは
五の目が上。さて歯の目はいくつだろう、などと考えてしまう。道頓堀を掃除するときにこういうアイディアがあれば、と思わせた。