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20030922







 今日も図書館。顔を覚えられたのか、読書室への出入りチェックもいたって簡素になる。こちらもそれぞれの職員のおよそのシフトを覚えてしまった。コ ピーチェックはどの人が寛容か、その人はいついるか、というあたりを飲み込んでおくのは役に立つ。うるさい人は版型がA4をちょっと越えてもセルフコピー不可だというのだ。

 昼食を宇波くん、木下さん、momoさんと。Tigerlily ことmomoさんの名前は、WWWの初期の頃からお見かけしていたのだが、じっさいにお会いすると、これまたとてもチャーミングな方である。
 そのmomoさんの案内でAngelへ。「レバノン料理以外ならなんでも」という宇波くんのリクエストもあり、トルコ料理屋へ。グレゴリオ聖歌を駆使し た斬新すれすれのポップチューンが流れる中、がつんとくる塩味ヨーグルトドリンクに始まり、頭が「きーーーーん」となるほど甘いトルココーヒーにいたるま で、こちらの食のカテゴリーをくつがえす油断のならない内容だった。

 図書館に戻って閉館まで文献を読んでから、再び宇波くん、木下さんと待ちあわせて、Higateのパスタ屋へ。ロンドンには珍しくうまかった。今日はイギリスへ来てから初めてまっとうな飯を食べているな。デザートにいたるまですっかり満足した。
 「今日はもう人間は終わり」とすっかり酔っぱらったていの宇波くんは、突然、昔聞いたという泉君が作った唄の話を始める。「いや、それがラップじゃなく て、黒人がラップを歌うっていう唄なんですよ。でも節はタブーなんですけどね」という不思議な前説とともに、てんてれれっててんてんてん、と歌い出されたその唄は、食ったものを全部吐くかと思うくらい腹筋に響いた。

 表に出るとすでに夜10時過ぎ。人気のない通りで「この向こうはマルクスの墓で、 ここは昔有名なシリアルキラーが出たところで」などと、縁起でもないことを連発する宇波くん。人間が終わったので恐いものがないらしい。そのマルクスでシリアルなキラー通りを曲がり、瀟洒な住宅地にあるmomoさんのお宅へ少しおじゃまする。ダ ニエルさんも帰宅してきてお話。なんでも昨日今日と行なわれていたLondon Open Houseで、とある教会に行ったところ、とてもシンプルな造りの中にオルガンが一台置いてあり、神父様が弾きながらこちらを振り向いて、なんともいえない笑顔で迎 えてくれたそうだ。「モンティ・パイソン!」オチを同時に言ってしまった。

 momoさんにはなんと「浅草十二階」をお買いあげいただいていた。よろこんでサインをしたが、相手の名前だけ書いて自分の名前を書くのを忘れていた。ロンドンに自著が一部あると思うとちょっとうれしい。

 ジャン・リュックのもくもく進むパイプオルガンCDや高速道路のトンネルに糸を張ったフィールドレコーディングCDなどを宇波くんに聞かせてもらいつつ、アンテナとは何かと考える。はてなアンテナ。おっと終電が近い。宿に戻ると夜半過ぎ。

 いつもなら寝るところだが、TVをつけたら、唄あり踊りありのインド映画をやっていて、思わず見込んでしまう。
 往年の竹の子族だけを入学させたような奇怪なファッションはびこる学園大学、その竹の子を代表する男と女は学園の人気者、仲良しの二人がフレンドシップ を暖め合っていると、突如インド映画のヒロインを絵に描いたようなロンドン帰りの美女が現われ、それは教頭の娘であることが判明し、男は学生にありがちな 教頭という要職への軽い反発心から、英国趣味のいけすかない女をいじめてやろうと、ロンドン暮らしが長すぎておまえはヒンズーの心を忘れただろう、ヒン ズー語で何か気のき いた唄を唄ってみろと迫るのだが、意外や彼女が歌い出した歌からはヒン ズーの魂漂い(このあたり、ロンドン在住のインド人にはぐっときそうやりとりである)、男はすっかり見識を改めたところにもってきて、学園対抗歌合戦でフレンドシップ二人組が窮地に立たされているところ に、女はなんと エレキギターをかかえてろうろうとヒンズーの魂を唄いながら登場(もちろんここからは画面いっぱい唄と踊り)、才色兼備のヒンズー女に男はすっ かり参ってしま うのだが、いっぽうフレンドシップ女は、他の女に恋する男を目の当たりにして実は男に恋していた自分に気づき、ある日、三原順子を百倍ケバくしたような格 好で大学に 現われ、男とヒンズー女の失笑を買ってしまい(以下略)
 筋はともかく「少女に何が起こったか」に代表される80年代大映ドラマを彷彿とさせるチープさ。それが90分くらいで終わるかと思ったらなんと延々三時間続き、さすがに最後の一時間は寝てしまった。

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