大英図書館へ。宿からは徒歩5分。忘れ物をしても取りに帰れる距離だ。
読書室へ入るには閲覧資格を得る必要がある。といっても来るまでそんなことは知らなかったので、別段用意もしていない。
まずインフォメーションで要領を聞いたところ、どうやらパスポートのようなIDがあれば資格はとれるらしい。職員証があれば、リサーチャーの閲覧資格が得られるという。
資格申し込み部屋は奥にあって、ここにずらりと端末が並んでいるので、必要事項を入力する。「他の図書館で調べましたか」などと、暗にあえてここで調べものをする必然性を問う項目があるのだが、めんどう
なので「この図書館が始めてである」と正直に書く。
そのうち名前を呼ばれるから、パスポートと英語入りの名刺を示す。いちおう日本語の職員証も見せてみた
が「いいですよ、読めないもの」と返された。テーブルに備え付けの小型カメラに向かってポーズをとると、すぐに写真入りの閲覧証が出てきて、あっさり手続
き終了。隣の人の手続きぶりをちらちら見ていたが、一般の閲覧資格であれば、免許証などのIDで簡単に手続きできるようだ。
読書室はHumanities, Science, Rare &
Musicなどいくつかあり、自分の興味によって適当に選ぶ。机は幅1mほどもあり、奥行きも広い。じっさい、大きな本を何冊も積んでる人が多い。ノート
パソコンを使える机もけっこうあって、パソコンを広げてリファレンスを広げても、じゅうぶん仕事ができる。
机を確保したらまずその机の番号をメモする。ここがこれから先の仕事の中心となる。
開架にもずらりと本は並んでいるが、目指す資料の多くは閉架なので、各読書室の端末でリクエストする。このとき、自分の机の番号を入力するところがミソである。
しばらく机で本でも読んで待っていると(さいわい、開架にもEncyclopediaやReference集が充実しており、読む本は山ほどある)、や
がて、机の右端にある緑のランプが点灯する。これが本が届いた合図なので、
カウンタに行き、閲覧証を見せて本を受け取る。案内には「70分以内にお届けするよう努力しています」とあるので、おおよそそれくらい見込んでおけばよい。あらかじめ前日以前にリクエストしておく
と、朝いちばんにカウンタで受け取ることができし。その日に読み切れなかった本は翌日に持ち越して、これまた朝いちばんに受け取ることができる。通うほどに便利になる仕組みである。
清水一嘉氏の本にあった「Picture
Postcard」という雑誌をリクエストすると、1,2巻が欠けていることがわかった。「自転車に乗る漱石」に掲載されている雑誌の表紙がなぜか3巻と
半端なのでちょっと不思議に思っていたのだが、どうやらここ「世界の知識」大英図書館にもなかったということらしい。
カフェレストランはセルフサービスで、ジョージ三世が集めたという巨大なガラス張りの書架を眺めながらサラダを食う。
書架を守(も)るガラスの中を掃き進む
音のなきパズルの如き書架に消ゆ
コピーにはセルフサービスがあり、A4がおよそ20セント。コピーカードの券売機があり、まとめ買いをすれば割安になる。A4を越える本やこわれやすい本は職員に頼むことになるが、こちらはコピー代がべらぼうに高い。
永田町の国会図書館に比べると、格段に居心地がよい。結局、朝の9時半から夕方の8時まで入り浸りになった。
近所に「Rebuild 1899」と書かれた建物。1900年にロンドンに漱石がきたときは、この建物は真新しかったのだろう。帰ってから、昨日の買い置きを食い、コピーした文献を読み直して寝る。