Tex Averyの「赤ずきんちゃん」


T. Averyのキャラクターといえばまず思い浮かぶのが、「赤ずきんちゃん」。数作に登場して、いずれの作品でも途中で歌を唄う。そのお色気たっぷりの動きは、人間のようで人間でない。つまりこの世のものとは思われないのだが、そんな色気にひかれるぼくの頭はどの世にあるのか。

こうしたアニメーションによるなまめかしい動きはしばしば人間の動きをトレースして描かれたものだと思われがちだがじつはそうではない。Tex Averyへのインタヴュー*によると、赤ずきんちゃんは、ロトスコープを使って描かれたのではなく、アニメーターのプレストン・ブレアが頭で描いたものらしい。音楽に合わせた映像を思い浮かべて、なおかつそれを1秒24コマの静止画として均等にコマ割りするなんて、ぼくには到底考えられない作業だが、アニメーターの人はそういうことができてしまう。ブレアのように、フィクションとしての色気まで出せてしまう。人間の頭ってどの世にあるんだろう。

ちなみにブレアは、ディズニーの「ファンタジア」でワニやゾウの踊りのアニメーションに関わっていた人。だから、フィクションとしての踊りを頭で描く経験が豊富だったというわけ。

一方、「Cross-country detours」で出て来る脱皮する(つまりストリップする)トカゲは、ロトスコープで描かれている。ちなみにTex Averyには、もうひとつ強烈なロトスコープの使い方をした「Magical Maestro」があるのだが、その話はこちらを。

* Tex Avery, Kingo of cartoons by J. Adamson, Da Capo Press ISBN 0-306-80248-1 p. 183 参照

(98.03.31)



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