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20010921


Edinburgh

 朝、宿替え。荷物が重いので徒歩圏内のB&Bに移る。朝食抜きで25ポンド。トイレとシャワーは共同、部屋はツインで充分に広い。ちなみに、駅から南にずっと下がったNewwington, Minto、そして東側のDalkeith近辺は宿屋だらけで、いくらでも選択肢がある。

 TVがついてたので「テレタビーズ」をしげしげと見る。じつはキャラクターは知っていたものの番組をちゃんと見たのは初めて。おもしろいやん。風景が、英国式庭園をくっきりはっきりさせ過ぎたような感じで、微妙にトチ狂っている。空がちょっと曇天ぽいのも、らしい感じ。

 近くの宅配サービス屋から本を送る。10kgあった。道理で重いはずだ。

 中華屋で昼飯を食べてから、Arthur's Chairを見上げたら、朝かかっていた薄雲がなくなっていたので、上ってみることにする。相変わらず空はいったいに雲で覆われているが、すぐには雨は降る気配はない。
 歩くうちに、この曇天の散歩が意外に気持ちいいことに気づいた。体の暖まり具合と空気の冷たさが、ちょうどいい頃合いなのだ。
 そして、「Dynamic Earth」と呼ばれるだけあって、歩くうちにみるみる景色が変わっていく。芝は遠目には苔ほどにしか見えず、土地の持つ曲面をなめすようにおおっている。南の斜面のところどころがイバラでおおわれている他は、ほとんど土地の形がそのまま芝色になって表われている。その曲面が途切れ、別の曲面が顔を出す。曲面には人の踏みしだいた小道が何本か通っているが、それは尾根や谷というほどはっきりした線ではなく、その気になればそこからはずれて芝色のただ中へ歩いていき、ほどなく別の小道へとたどりつくこともできる。
 芝は輝かしくはないが、なれるに従って緑の微妙な変化がわかるようになる。イバラのそばには小さな丸い糞がたくさん落ちていて、野ウサギが顔を出す。かがんでみるとイバラの中に、野ウサギの大きさをした道らしきものが見える。
 犬を連れて散歩に来ている人を何人か見かける。犬にもまた犬の好む道があって、人も犬に付き合いながら、立ち止まり、あるいは少し道をはずれながら歩いていく。

 気ままに歩いて北側の車道に出る、と向こうの広大な芝のグラウンドでサッカーの練習をしていた。そのグラウンドはほとんどDynamic Earthと続いている。まるで、ゴールのない、ずっと気ままに蹴っていけるグラウンドが果てしなく続いているかのようだった。こんなところでサッカーやラグビーをして育つ人は、たぶんグラウンドの上を走りながら、目に見えない起伏をいつも予感しているのではないだろうか。

 Dynamic Earthを降りて、再び坂を上がったところに幹線道路がある。そして驚いたことに、幹線道路沿いに建っているかに見える建物のいくつかは、実は起伏の谷底に建っていて、通りの上に顔を出しているのだった。幹線道路からは地階にしか見えないが、じつはそれは三階や四階だったりする。そんな建物が一つや二つではなく、いくつも並んでいる。
 どうやら、この街じたいもまた、かつてはDynamic Earthであったらしい。そして、そのダイナミックな起伏を、独特のやり方でなめしている。今日まで、歩いていた道のあちこちは、実は両側を建物でふさがれた「橋」だった。建物が橋の両側にスキマなく並ぶことで、橋は橋でなくなり、両側を遮蔽された道路となっているのだ。
 一方、その橋ならぬ橋の下はトンネルとなって、坂の下の街路が形成されている。

 ・・・と理屈では分かったのだが、実際に歩くと、メビウスの輪の上を歩いているような奇妙な感覚に陥る。
 たとえば図書館で調べものをしてからロイヤルマイルに出て、エジンバラ城の南の道をたどり、坂を降りていくと下に谷底の道が表われる。そちらに行けば下にもぐるのだろうからと思い、やや高いグラスマーケットの方を通っていくと、トンネルをくぐってしまう。なんだこれは。地図を開くと、そこはさっきの図書館の下だった。図書館の前の道は「GeorgeIV Bridge」、つまり橋で、くぐったばかりの道は「Cowsgate」。図書館のそばには両側に本屋やらでかい店が並んでたのでちっとも橋だと意識しなかなかった。やられたなあ。

  そういえば昨日の Regent Roadも、両側に門のような巨大な欄干が創られていて橋であることが意識されにくい構造になっていた。
 この街にはどうやら橋の両側に家を建てて橋ならぬ道にしてしまうような構造があちこちにある。これはどういうことだろう?

 アイリッシュ・ラグビーが近いせいか、そのあちこちのパブから咆哮が聞こえる。
 夕飯はまた例の中華屋へ。今日は二食ここで食べてしまった。

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Beach diary