Texture Time: 09 August 2000
Rome -> Arth-Goldau
トンネルでは液晶が窓に映る
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コンパートメントから抜け出して
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隣の空のコンパートメントで打っている
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いまはまだ眠る時間だという合意が
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隣のコンパートメントでは形成されている
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ぼくは彼や彼女を起こさないように
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そっと抜け出さなくてはならなかった
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夜中に停車した駅で乗り込んできて
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声だけの挨拶を交わした乗客の
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姿もみないまま
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こちらのコンパートメントではその夜中まで
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数人の客が談笑していたはずなのだが
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いまはいない
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低い天井におされるように
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くらがりで毛布にくるまりながら
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人を気配としてのみ感じることに楽々と甘んじる
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寝台という装置
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長いトンネル
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コンパートメント
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の下の寝台の男の子は
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いつも上半身裸で
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妙に小太りして胸がふくらんでいるので
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最初はもう片方の寝台の男の彼女かと思った
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その子が裸でむっちりとした足を寝台から投げ出しているので
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寝台を降りるたびに胸が見えそうになる
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もしかしたら女に変わっているのではないか
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そして子供の高い声は女の声にすりかわっているのではないか
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アニメの声優が子供の声と地声を使い分けるように
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トンネルの中では線路のつぎ目を通過する音はくぐもって
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ティンパニ
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のようにどろどろと低いうなりをあげる
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子供が廊下を通る
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女だったかもしれない
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このトンネルはいつまで続くのか見当もつかない
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水を一口飲む
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何かをすることが、窓の外にかすかな光をもたらし
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トンネルの出口をもたらすのではないか
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そう思い、少しずつ違うことをする
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腰の位置を変えてみる
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ふいに明るくなる
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岩肌の間から完璧な雪山が見える
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