Texture Time: 96/07/31
導流帯だらけの道を規則正しくバスが行く
1/23/96 9:50
教習所の仮免中の車が前を行く
1/23/96 9:49
ゆっくりとしたスピードが、守られるべきルールがあることをつげる
1/23/96 9:49
彦根プリンスホテルでは羽生名人が将棋をさしている
1/23/96 9:55
そこから数km離れた県道をこのバスは走っている
1/23/96 9:55
AMラジオからなめらかな朝のパーソナリティのしゃべくり
明らかにスムーズに時間が流れていることをしめす
1/23/96 9:52
カーブ、逆カーブで
1/23/96 9:53
景色は大きく向きを変え
1/23/96 9:53
非常階段をゆっくり登る男が見える
1/23/96 9:52
この叙事的な文章は
1/23/96 9:54
やかましいキー音をたて打ち込まれ
1/23/96 9:54
そのやかましさが乗り合わせた学生の耳に届く
1/23/96 9:54
景色をことばに変換しようとする熱
1/23/96 9:58
かじかむ指を動かそうとする熱はどこからくるか
1/23/96 9:58
ことば以前の逃れようとすることば
1/23/96 9:59
ことばのためには
たとえばいま隣にすわった初老の女性と話すことのほうが
この行為よりずっと発見的ではないか
1/23/96 10:02
車をみてくるまとよぶことの不毛さよりも
1/23/96 9:59
発見、などという功利性もないいさぎよさをもっていないか
1/23/96 10:02
レンタルビデオ屋はぼくに無関係な風景ではなくなった
1/23/96 9:55
ぼくが昨日ビデオを買ったから
1/23/96 9:56
電気屋はよそよそしい風景になった
1/23/96 9:56
ぼくが昨日別の店で買ったから
1/23/96 9:56
橋を渡る
1/23/96 10:02
すずめが散る
1/23/96 10:02
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