- ELAN即席入門 -

ELANでQuickTimeに字幕を入れる

動作環境

Macintosh OS X以上

用意するもの

・ELAN
・QuickTime Player Pro、もしくはQuickTime 7 Pro(Macに標準でついてくるQuickTime Playerではうまくいかないので、Appleのサイトで購入します)
・QuickTime Player Pro で読めるムービーファイル(これを用いて、あらかじめELANで注釈を入れておきます)

何の役に立つの?

ELANで注釈を入れ、保存したテキストデータをもとに、ムービーに字幕を入れることができます。

 ELANで、「別ファイル形式で保存>QuickTime文書形式」を選ぶと、数行の文字が頭について、各注釈の開始時刻・終了時刻(秒単位)・内容がテキストとして保存されます。これをもとに、QuickTime Player Proを用いてムービーに字幕を入れることができます。外国語のサブタイトルを入れたり、コメントを適切なタイミングで入れたいときに役立つでしょう。字幕は複数加えることもできます。以下は、QuickTime Player Proの標準機能なので、他の映像編集ソフトは必要ありません。

まずはELANで字幕テキストファイルを作ろう

  1. ELANでムービーを注釈を入れたあと、「別名でファイル保存」を選び、QuickTime subtitle)文書形式を選びます。
  2. 字幕にしたい注釈層にチェックを入れていきます。
  3. ここでは簡単にするために「一つのQuickTime文書ファイルに注釈層を統合する」を選びます。これで、複数の注釈層が一カ所の字幕にまとまります。(複数箇所に字幕をつけたいときは「たくさんの字幕テキストファイルを扱う」を読んで下さい)
  4. 保存すると、次のようなテキストファイル(以下「字幕テキストファイル」)ができます。いろいろ呪文のようなことが書いてありますが、とりあえず無視しましょう。(何が書かれてあるか気になる人は、後述する字幕の色、大きさ、フォントなどを自分で変えたい を読んで下さい。)

{QTtext} {font:Times}{plain}{size:18}
{textColor: 0,0,0}{backColor: 65535, 65535, 65535}{justify:center}
{timeScale:1000}
{width:120}{height:60}
{timeStamps:absolute}{language:11}{textEncoding:0}

[00:00:00.000][00:00:01.140]
X: やあ
[00:00:01.450]
[00:00:03.520]
X: どうしてた?
[00:00:04.380]
[00:00:06.920]
X: えっと
[00:00:08.130]
[00:00:09.530]
X: この前
[00:00:10.750]
[00:00:12.910]
X: あ、やあ
[00:00:13.370]
[00:00:17.710]

字幕テキストファイルを映像に貼り込む

  1. 字幕テキストファイルをFinderからQuickTime Playerにドラッグ&ドロップして下さい。
  2. 字幕ムービーとなって表示されます。

    sub_xmovie

  3. QuickTime Player上で"編集" メニューから"すべてを選択"を選んでから、コピーして下さい。終わったらムービーを閉じましょう。
  4. ELANで解析に用いた映像(以下、「元ムービー」と呼びます)をQuickTime Playerで立ち上げます。"編集" メニューから"すべてを選択"を選びます。次に"選択範囲に追加して調整" を選んで下さい。これによって、テキストトラックが元ムービーに加わります。適切なタイミングで字幕が入っていれば成功です。

字幕の位置や大きさを調節する

  1. テキストトラックの画面上の位置や大きさを調節するには、元ムービーのプロパティを変更します。
  2. まず、"ムービー"メニューから、"ムービーのプロパティを表示"を選びます。
  3. 上部のトラックの中にある「テキストトラック」を選びます。
  4. 「ビジュアル設定」を選びます。「オフセット」に適当な数値を入れると縦横の位置が変更されます(画面からはみ出した位置にも移動できます)。「調整後のサイズ」で大きさを、「反転/回転」で向きを調節します。

    property1

字幕入りの元ムービーを保存する

  1. できた字幕入りの元ムービーを「ファイル>別名で保存」で保存します。
  2. 元ムービーが.mov以外の形式の場合は、そのままでは保存できません。このときは、「ファイル>書き出す」を選んでから、「ファイルからQuickTimeムービー」を指定します。書き出すムービーのサイズや設定は、「オプション」で指定します。

補足1:チャプタを作る

いったん字幕ができると、チャプタを簡単に加えることができます。チャプタとは、QuickTimeムービーの右下に現われるメニューで、これを利用すると、好みの場所にすばやくジャンプできます。

  1. QuickTime Playerに移動します。
  2. "ウインドウ" -> "ムービーのプロパティを表示"を選びます。
  3. 上部のトラックの中にある「テキストトラック」を選びます。
  4. 「その他の設定」を選びます。
  5. 「チャプタ」の横のバーから「テキストトラック」を選びます。
  6. 「このトラックをあらかじめ読み込む」「キャッシュ」にはチェックを入れておくとよいでしょう。



  7. これでムービーの右下にチャプタが入りました。



補足2:字幕の色、大きさ、フォントなどを自分で変えたい

自分で字幕入り元ムービーの字幕の色、大きさ、フォントなどを変更するには、二つの方法があります。

1. ELANで保存するときに"Edit Font and Display setting"をクリックして、内容を指定する。

じつは、QuickTime文書形式で保存しようとすると、画面の一番下に"Edit Font and Display setting"というボタンが表示されます。これをクリックすると、以下のような画面が出てきます。



各項目の意味は以下の通り。

・Transparent Background (背景色を透明にします。これをチェックすると背景色は選べません)
・Background Color (背景色)
・Text Color (テキストの色)
・Font(フォント)
・Font size(フォントのサイズ)
・Text Alignment(テキストの左、中、右そろえ)
それぞれ「閲覧」ボタンを押すか、適当なものを選んで変更します。「閲覧」ボタンを押すと、いろいろ出てきますが、わからない場合はとりあえず、以下のようにSwatchesを押してから色を選ぶといいでしょう。





2. 保存したテキストを編集する。

保存した字幕テキストファイルの中身をエディタ(テキストエディットなど)で編集して、フォントやテキストの配色などを決めることもできます。ファイルの冒頭に設定部分がありますので、ここでいくつか紹介しておきます。

  1. {font:Times}{plain}{size:18}
    フォントの字体と大きさを設定する部分です。font:のあとに字体名を、size:のあとに大きさ名を入れます。
  2. {textColor: 0,0,0}{backColor: 65535, 65535, 65535}
    テキストの色と背景色を設定する部分です。それぞれの三つの数字にRGB値(0-65535)を入れます。たとえば{textColor: 0,0,65535}なら、文字は青になります。
  3. {justify:center}
    字幕の位置です。right, center, leftのいずれかを入力します。
  4. {width:120}{height:60}
    字幕の幅と高さ(ピクセル)です。

補足3:複数の字幕を扱う方法

 複数の人が一度になにかをしていたり、声を出しながら体を動かしているような場合、一つのムービーの上に字幕をいくつもつけたくなります。こんなときは、「QuickTime subtitle)文書形式」で保存するときに「一つのQuickTime文書ファイルに注釈層を統合する」のチェックをはずしましょう。これで、複数の注釈層が別々の字幕テキストファイルとして保存されます。

  1. たとえば、X,Y,Z三人の発話が別の注釈層に記されていたとしましょう。「一つのQuickTime文書ファイルに注釈層を統合する」のチェックをはずして、jimaku.txtとして保存すると、実際には次のような三つの字幕テキストファイルができます。

    【jimaku_x.txt】

    {QTtext} {font:Times}{plain}{size:18}
    {textColor: 0,0,0}{backColor: 65535, 65535, 65535}{justify:center}
    {timeScale:1000}
    {width:120}{height:60}
    {timeStamps:absolute}{language:11}{textEncoding:0}

    0001.14 0001.45 X:やあ
    0003.52 0004.38 X:どうしてた?
    0006.92 0008.13 X:えっと
    0009.54 0010.75 X:この前
    0012.91 0013.37 X:あ、やあ

    【jimaku_y.txt】

    {QTtext} {font:Times}{plain}{size:18}
    {textColor: 0,0,0}{backColor: 65535, 65535, 65535}{justify:center}
    {timeScale:1000}
    {width:120}{height:60}
    {timeStamps:absolute}{language:11}{textEncoding:0}

    0001.95 0002.32 Y:あ
    0004.68 0004.97 Y:元気
    0007.03 0008.06 Y:あ
    0011.31 0011.56 Y:あ
    0014.84 0015.13 Y:ひさしぶり

    【jimaku_z.txt】

    {QTtext} {font:Times}{plain}{size:18}
    {textColor: 0,0,0}{backColor: 65535, 65535, 65535}{justify:center}
    {timeScale:1000}
    {width:120}{height:60}
    {timeStamps:absolute}{language:11}{textEncoding:0}

    0014.18 0014.48 Z:やあ

  2. それぞれをQuickTime Playerにドラッグ&ドロップします。三つのムービーが表示されます。
  3. 字幕テキストファイルを映像に貼り込む】を参考に、y,z二つのムービーをそれぞれxのムービーに貼り込みます。
  4. 位置を調節すると、三人の会話ムービーができあがります。



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