会話分析・ジェスチャー分析研究者のためのELAN即席入門

細馬宏通(滋賀県立大学)

とにかくELANを使ってみよう

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 これまで会話分析やジェスチャー研究をやるためのソフトをいろいろ使ってきたが、ムービーと波形を一度に分析できて、注釈(annotation)をどんどん書き込め、しかも狙った発語やジェスチャーにすぐアクセスできるソフトとなると、なかなかこれといった決定打がなかった。

 しかし、ELANは、かなり使える。少なくとも、Macユーザーにとっては、いまのところ、いちばん使えるソフトではないかと思う。(なお、私はELANの開発者とは関係のない1ユーザーであり、勝手に推奨しているだけである。念のため。)
 ・・・が、ELANには少々難点がある。それは、使うキーに癖があること。注釈を入力してenterを押したのにデータが入らない(じつはcommandキーを押しながらenter)、波形を選んでスペースを押したのに再生しない(じつはcontrolキーを押しながらスペース)、というところで詰まっている人は多いのではないか。
 もうひとつは、ユーザーマニュアルがあまりに複雑だということ。多機能過ぎて、どこから手をつけてよいのかわけがわからない。

 そこで、このページでは、とりあえず難しいことは置いといて、さっさと分析をしたいんですけど・・・という人のために、ごく必要な手順だけを書き留めておく(じつは自分のための備忘録でもある。もう最近忘れっぽくて・・・)

 なお、私がMacユーザーである関係上、以下では、QuickTime Player Pro, ムービーファイル(.mov)、ELAN 3.6.0、Macintosh OS 10.4という環境でのやり方を説明します。
 Windowsユーザーの人は「コマンドキー」をControlキーに、「Optionキー」をaltキーに読み替えてね。

ELANを開く前に準備するもの

・ムービーファイル(.mov)
・ムービーファイルから音声だけを取り出した音声ファイル(.wav)*1,*2

*注1:QuickTime Playerで、「ファイル>書き出す」を選ぶと作ることができる。movファイルに対応している波形編集ソフト(SoundStudioなど)で作ることもできる。
*注2:QuickTime Player Proでは、ときどき書き出した音声ファイルとムービーファイルとの時間が一致しないことがある。これは、何度か編集を行ったムービーを使った場合に起こる。このような場合は、ムービーファイルからムービーを一度「ファイル>書き出す」で書き出して作り直すとよい。

最初の手順:分析したいファイルを選ぶ

・まずELANを立ち上げたら、上のメニューから「File -> New」を選ぶ。
・ファイルの一覧が出てくるので、この中から分析したい.movファイルを選んで「>>」マークをクリック。
・画面はそのままで、.wavファイルも選んで「>>」マークをクリック。ELANではこのように、複数のファイル*3を選ぶことができる。
・OKをクリック。
・うまく行けば、左上にムービーが、下半分に波形が出るはず。
・ムービーと波形を選ぶとこんな感じの画面になる。

*注3:異なるアングルから撮影された複数のムービーファイルを同時に表示することもできる。また、ELAN上でシンクロさせることもできる。詳しくはELANマニュアルp18「4.2.2. Synchronizing video files 」を。

default.jpg

図1: ムービーファイルと音声ファイルを取り込んだところ。

まずは注釈を書いてみる。

・波形の上をドラッグしてみよう。範囲が指定されて薄紫色に変わる。
・この状態で、「default」と書かれた薄赤の欄(このような欄を「ティアー Tier」(注釈層)と呼ぶ)をダブルクリックする。白い空白ができるはず。

after_dc.jpg

図2: 選択範囲(薄紫色)とTier(薄赤色)の交差するところをダブルクリック。
白い注釈入力欄が開く。

・白い空白に注釈を入力する。日本語も打てる。
入力を確定するには、ただenterキーを押してもダメ。コマンドキー(アップルキー)+リターンキーを押すこと。
・うまく行けば、Tierに打ちこんだ文字が表示される。

input_done.jpg

図3: 注釈を入力後、command+enterキーで確定したところ。

入力した注釈の一覧

・ELANの画面の右上にご注目。Grid, Text, Subtitles, Audio Recognizer, Controls(格子、テキスト、テロップ、音声認識、再生調整)というメニューが並んでいる。まずはGrid(格子)を選んでみよう。

default_grid.jpg

図4: 「Grid」(格子)で、Emptyの横のチェックをはずす。

・おそらく最初は「empty」という文字が出てきて左横にチェックが入っている(図の矢印部分)。このチェックをはずすこと*4
・チェックをはずして「empty」をマウスで押すと、「empty」と「default」のいずれかを選択できる。じつはここが、Tierを選ぶ場所。
・「default」を選ぶと、入力した書き込みとその時間範囲が表示される。

注4: このチェックを入れると、すべてのTierの注釈がずらりと表示されるらしい。が、私の環境ではうまくいかなかった。バグか?

grid_changed.jpg

図5: Gridに指定したTierの注釈を表示させたところ。

いろいろな再生

・通常再生:control+スペースキー(ただスペースを押してもダメ。注意)
・選択範囲だけ再生:shift+スペースキー
・選択範囲をちょっと前後に広げて*5再生:shift+control+スペースキー

・他にもいろいろ。ボタンとショートカット一覧をどうぞ。

注5: どれくらい前後に広げるかは、「Option->Play around selection...」で変更できます。

注釈層(Tier)を増やす

・発言者が複数いるときや、発言とジェスチャーなどのデータを分けたいときなど、横欄(Tier)を増やしたくなる。そんなときは・・・
・上のメニューで「Tier -> Add New Tier」。
・新しいTierの名前をつけてAddを押す。
・いくつでも追加できる。
・満足したらCloseを押す。
・欄が増えている。

tier3.jpg

図6: Tier(注釈層)を増やしたところ。

いったん入力した注釈の時間範囲を変更したい

・Tierの上で、変更したいデータを選びます。
・optionキーを押しながら、データの端にマウスを当ててボタンを押すと、カーソルの形が変わります(微妙に反応が鈍いので、カーソルが正確にデータの端の上にあるか確かめて、何度か試してみるとよい)。
・そのまま左右にドラッグすると、範囲が変更できます。

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